Eye Am Here!!! → Get Feed twitter 食べログ はてなブックマーク Last.fm 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【推薦】Kanye West / My Beautiful Dark Twisted Fantasy

My Beautiful Dark Twisted Fantasy
  Visit Official Site

  リリース日:2010/11/22
  レーベル :Def Jam / Roc-A-Fella
  Ex-Prod.:Shawn Carter, Kanye West, Gee Roberson & Kyambo "Hip Hop" Joshua
  客演参加 :Kid CuDi, Raekwon, Jay-Z, Rick Ross, Nicki Minaj, Bon Iver,
         Pusha T, Prynce CiHi, The RZA, John Legend
  製作参加 :The RZA, No ID, Mike Dean, Jeff Bhasker, Plain Pat, Bink!,
         Emile, Mike Caren, DJ Frank, etc.

  評価:★★★★★★★★☆☆



 Quincy Jones御大にダメ出しを食らったとしてもKanye Westはアーティストとして優秀だ。大衆が求めるサウンドを作る技術にも秀でているし、事実これまでの彼はトレンドとの折り合いを上手くつけながら“確実に売れるアルバム”を作ってきた。ところが、毎週金曜日の楽曲無料公開(Good Friday)や、上に貼ってあるショート・フィルムで話題を集めたこの5作目では、これまでに培ってきた技術を総括させ、およそ一般のリスナーからすれば解し難く、退屈でつまらないと言われても仕方ないようなアルバムを送りつけてきた。言うまでもなく彼はラッパーであり、体現するジャンルはヒップホップであることに変りないが、今の彼は、例えばThe RootsやCommon, Mos Def, Outkastのような“アーティストのためのアーティスト”となることを望んでいる。クラブ・ミュージックとしてのヒップホップではなく、家庭の高価なコンポーネント・システムでヘッドフォンを掛けながら聴くことでしか理解できないような音楽――この長ったらしく厨二病のラノベ作家みたいなタイトルのアルバムは、ヒップホップをヒップホップたらしめてきた歴史へ、彼が初めてポジティヴに反乱した作品だ。それどころか、ヒップホップという固定観念から脱却せんと足掻いてすらおり、実際にこのアルバムはコンポーザーとしてのKanyeはずっと奥ゆかしくなり、スタジオの椅子を共にしたゲスト・プロデューサーのアイデンティティが際立っている。ちなみに、iTunesStore経由でアルバムのジャケット画像を取り込むと、例のヌード版にモザイクをかけたものが表示される。だったら差し替え版でいいじゃん(笑
 アルバムはその幕開けをMike Oldfield《In High Place》のワン・フレーズに代弁させた《Dark Fantasy》でパワフルに始まる。小刻みに痙攣するチェロと滑らかに上昇するヴァイオリンの温もりに、アクセントとして打ち鳴らされるピアノの不協和音が入り乱れるトラックで、Kanyeはメインを自身のラップではなくコーラスと生楽器の演奏に譲り、これはラップ・ミュージックではなく様々な音楽の集合体なのだと主張する。このアヴァンギャルドさはさすがRZAといったところ。No IDのデジタル・マインドが作用した《Gorgeous》では、実に4小節にわたるエレキ・ギターのリフを常に繰り返し、さらにはゲストに招いたKid CuDiとRaekwonに全く同じメロディ・ラインを歌わせる古典的な手法を用いたかと思えば、Jeff Bhaskerと共作した《Power》ではまるで《Jesus Walks》のように野性的なバック・グラウンド・コーラス(もっとも、あっちの元ネタはゴスペルだが)を自身のラップの装飾にしながらコンシャスなメッセージを吐露する。クレジットはないがRihannaにコーラスを依頼した《All of The Lights》では、めまぐるしく変わるドラム・パターンを楽しませるために、ホーンズ隊はあくまでシンプルに与えられたフレーズのみを繰り返す。一方で、彼の代名詞でもあったサンプリング芸もしっかりと息づいている。例えば《Devil In A New Dress》ではSmokey Robinson《Will You Still Love Me Tomorrow》をほぼそのまま使用し、さらにエレキ・ギターでデジタルの洗礼を与えている。John Legendの枯れたヴォーカルが寂しげに震える《Blame Game》でのメランコリックで寒々しいピアノの音色はRichard James《Avril 14》によるものだが、Kanyeは楽器とJohnのためのスペースをたっぷり残しつつ、モジュレートをかけた声で擬似的に人ならざる者との会話に明け暮れる。ショート・フィルムのタイトルにもなった《Runaway》は、Backyard HeaviesとRick Jamesの邂逅に導かれ、ムチのようにしなるフェイク・スネアがKanyeを追い立て、ここでも楽曲の多くの時間をインストゥルメンタルに割いている。アルバムはBon Iverとの《Lost In The World》と、そこからなだれ込む《Who Will Survive In America》で荘厳に閉幕するが、これは前作『808s & Heartbreak』での基板となった《Love Lockdown》と同じくアフロ・キューバンへのリスペクトだ。そして、すべての楽曲が終了した後に聞こえる拍手は、決して喝采ではなく、まばらで寂しげであることからも、このアルバムが決して全ての人間にとって好ましい内容でないことを彼自身も理解しているのだろう。
 もちろん、日本の文化にも少なからずの影響を受けているKanyeだけあり、芸術と自己満足を履き違えている瞬間(《Monster》と《Hell of A Life》の支離滅裂ぶりときたら)もあるし、語られる内容はまるで高校生が哲学書を棒読みしているような、スイーツ(笑)が古典文学を付け焼刃でひけらかしているようなきらいもあるが、幸いにもこの作品は多くの面で成功していると言えるだろう。ヒップホップという音楽が様々なジャンルから影響を受け、同時に様々なジャンルへ影響を与えている事実を物語る作品が、またひとつ生まれた瞬間だ。それはいい意味でも悪い意味でもだが、音楽を芸術と捉える者にとって、この作品が全くの無意味になることはまずありえない。


テーマ : 洋楽CDレビュー
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

What R U Lookin' 4?
About Me

S-Eye

Author:S-Eye
ブラック・ミュージックを聴いていたりエロゲーをやっていたりするバーテンダーです。批評は基本的に辛口、読んでムカつくこともあるかと思いますが、正直なレビューを心がけていますのでご了承ください。コメント/トラックバックはお気軽にどうぞ。リンクもご自由に。

Follow Me
Playlist
Now Supporting
Event

絵師100人展 02

Pick Up

はつドラ合同バナーキャンペーン開催中

Now On Sale

はつゆきさくら

ツクモノツキ

3/29 On Sale

ルートダブル

3/32 On Sale

Princess-Style

4/12 On Sale

魔法使いの夜

5/5 On Sale

この大空に、翼をひろげて
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。